工作機械と産業機械って、どちらもモノづくりや生産現場を支えているから、何となく同じように思われがち。
でも実は、それぞれまったく違った役割があるんです。
この記事では、その意外な違いをやさしく解説しながら、モノづくりの舞台裏をのぞいてみようと思います。
知っておくと、普段目にする製品や工場の秘密がちょっとだけ違った視点で見えてくるはずなので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!
工作機械とは?

工作機械は、金属やプラスチックを削ったり切ったりして、製品の形を整えるための機械です。
明確に定義すると、以下のようになります。
工作機械の定義
切削、研削、せん断、鍛造、圧延などにより金属、木材、その他の材料を有用な形にする機械のことを工作機械という。
工作機械の歴史は実は古く、古代エジプトやローマ時代にも工作機械は存在していました。それが産業革命以降に技術が大きく進化し、いまでは航空機の部品や自動車のエンジン部品など、高精度な加工が必要な場面で欠かせない存在になっています。
工作機械を操作するには専門的な知識や技術が必要で、熟練したエンジニアが扱うケースが多いです。
工作機械は別名「マザーマシン」とも言われている
工作機械は、いろんな機械やそのパーツを作るから「マザーマシン」って呼ばれいます。「母なる機械」=「機械を作る機械」って意味からこう呼ばれているんです。世の中にあるあらゆる部品は、工作機械から作られている言っても過言ではありません。
工作機械の種類

工作機械は、旋盤・フライス盤・ボール盤・中ぐり盤などが代表的に挙げられます。ここでは、それぞれの工作機械と具体的な加工内容を順番に見ていきましょう。
旋盤
旋盤は、工作機械を代表する存在で、素材(主に金属)を回転させながら刃物を当てて、円形や円筒形に削り出す機械です。こうした形状を削ることから、「丸物」「丸物加工」と呼ばれることもあります。
旋盤の種類
- 汎用旋盤
操作をすべて手動で行うタイプの旋盤です。熟練した技能が必要ですが、自在な加工が可能な機械です。 - 立旋盤
主軸が垂直に設置され素材を水平に回転させて加工する方式で、大きくて重量のあるワークの加工に適している旋盤です。 - タレット旋盤
旋回式の刃物台(タレット)を備え、複数の切削工具を切り替えて加工する機械で、量産加工に向いています。 - 卓上旋盤
作業台に設置して使うタイプの小型の旋盤で、小さなパーツの加工や試作などでよく利用されます。 - NC旋盤
汎用旋盤に数値制御装置(NC)が組み込まれたものです。プログラムを用いて自動かつ安定した精度で加工でき、ミクロン単位(1/1000の精度)での加工が実現できます。 - 正面旋盤
作業者の正面側に大径の主軸や面盤が取り付けられた大型旋盤で、大きい平面を削るときなどに用いられます。
旋盤の主な用途・加工例
面削り、外丸削り、テーパ削り、中ぐり、穴あけ、突切り、ねじ切りなど、多彩な切削が可能です。
フライス盤
フライス盤は、複数の刃を持つ“フライス”と呼ばれる工具を回転させ、固定した工作物に当てて切削する機械で、ミーリングマシンとも呼ばれます。工作物を取り付けたテーブルを上下左右に動かしながら加工を進める仕組みです。
余談ですが、製造工場内にある機械で「M」と書かれていたら、それはこのミーリングのことを意味しています。
フライス盤の種類
- 汎用フライス盤
手動操作で刃物の位置や工作物を動かしながら加工するフライス盤で、使い勝手は汎用旋盤と似ています。 - NCフライス盤
汎用フライス盤にさらに数値制御機能(NC)を備え、プログラム通りに自動で加工が行えるようにしたものです。仕上げ加工などで重宝される機械です。
フライス盤の主な用途・加工例
平面、側面、段差、溝などの切削から、穴あけ、3次元形状の加工まで対応可能で、金型や機械部品の製作などに幅広く使われています。
ボール盤
ボール盤は、ドリル工具を回転させて素材に穴を開けるための機械です。テーブルなどにワークを固定して、上からドリルを下ろす構造が一般的で、おもに穴あけに特化しています。
ボール盤の種類
- 直立ボール盤
床に据え付けるタイプで、最も代表的なボール盤です。ドリルがついた主軸を上下させて穴を開けます。 - 卓上ボール盤
作業台に置いて使うコンパクトなタイプ(直立ボール盤のミニチュア版)。小物部品の穴あけに適しています。 - 多軸ボール盤
複数のドリル軸が搭載されており、一度に複数の穴あけを行えるボール盤です。 - 多頭ボール盤
複数の主軸頭を備え、それぞれに異なる工具を取り付けられるタイプです。 - タレットボール盤
回転式タレットに複数の工具を装着し、連続して穴あけや加工を行えるボール盤です。 - 深穴ボール盤
深い穴を専門に開けられるよう設計されたボール盤で、ガンドリルマシンとも呼ばれています。 - ラジアルボール盤
主軸頭がアームで回転・水平移動でき、素材を動かさずに複数箇所の穴あけができるボール盤です。
ボール盤の主な用途・加工例
ボール盤は、穴あけ加工、中ぐり加工、座ぐり加工、ねじ切り加工、リーマ加工などが代表的で、金属や木材をはじめとしたさまざまな素材に対応しています。
中ぐり盤
中ぐり盤は、既に穴を開けた工作物に対し、その内径をより大きく広げたり、精密に仕上げたりするための機械です。回転する工具を穴の内側に当て、切削を進めていきます。
中ぐり盤の種類
- 横中ぐり盤
主軸が水平方向で、大きく深い穴の加工に向いています。 - 立中ぐり盤
主軸が垂直方向で、安定した精度が得やすいのが特徴です。 - ジグ中ぐり盤
主軸位置の調整精度が高く、非常に精密な加工が可能です。 - NC中ぐり盤
数値制御により自動かつ精密な中ぐり加工が行えます。ただし、ある程度のプログラム知識が必要な機械です。
中ぐり盤の主な用途・加工例
中ぐり盤は、自動車エンジンのシリンダー部など、精密さが求められる穴加工に多用されています。
研削盤
研削盤は、高速で回転する砥石を工作物に当て、表面を削り取ることで高精度な仕上げを行う機械です。グラインダーと呼ばれることもあり、主に最後の仕上げ工程で重宝します。
研削盤の種類
- 平面研削盤
工作物の平面を研削でき、工作物を平行に往復させて削る方式が一般的な加工方法です。 - 円筒研削盤
円筒形の外側を研削する研削盤で、回転するワークを砥石で削ります。 - 内面研削盤
円筒形ワークの内側を研削するための機械です。 - 工具研削盤
専用の工具を研ぐ目的で使われる研削盤です。小型の工具研削盤では、主にドリルの刃先が欠けた場合などでよく使用されます。 - センタレス研削盤
ワークを直接チャッキングせずに研削できる機械です。 - ジグ研削盤
抜き型などの内面形状を精密に仕上げるために使用されます。 - 成形研削盤
平面研削盤の一種で、ワークの形状に合わせた砥石を適宜使いわけ、成形加工を行う研削盤です。 - NC研削盤
NC制御により自動で高度な研削加工ができる機械で、こちらもプログラム知識が必要です。
研削盤の主な用途・加工例
研削盤は、主に自動車部品や精密部品など、高い精度が要求される製品の仕上げ工程で広く用いられています。
マシニングセンタ
マシニングセンタは、回転する切削工具で中ぐりやフライス、穴あけ、ねじ立てなど、複数の加工を連続で行える数値制御工作機械です。自動工具交換装置(ATC)を備えており、プログラム通りに工具交換も含めて全自動で加工を進めてくれるとても便利な機械です。
マシニングセンタの種類
- 立形(竪型)マシニングセンタ
主軸が垂直方向に配置されているタイプのマシニングセンタです。汎用性が高く、一般的に広く使われるマシニングセンタで、おそらくみなさんが一番最初にイメージするマシニングセンタがこちらではないではないでしょうか。 - 横形マシニングセンタ
工具が水平方向に取り付けられたタイプで、ワークの側面加工に向いているのが特徴です。 - 門形マシニングセンタ
主軸を支える構造が「門」の形になっているタイプのマシニングセンタです。大型ワークの加工に適しています。 - 5軸制御マシニングセンタ
X・Y・Zの3軸に加え、「傾斜」の2軸を加えた2つの回転軸を組み合わせることで複雑な3次元形状にも対応できようにした機械です。これにより、複雑な3次元曲面の加工や、アンダーカット(隠れた加工面) の加工もこの機械1つで対応できます。
マシニングセンタの主な用途・加工例
マシニングセンタは、自動車エンジン部品の切削・穴あけから金型の製造まで、多岐にわたる加工で活躍しています。
歯切り盤
歯切り盤は、ホブカッタやピニオンカッタ、ラックカッタなどを使用して歯車を削り出す工作機械です。対象となる歯車の形状に合わせ、工具を回転させながら成形していきます。
歯切り盤の種類
- ホブ盤
ホブと呼ばれる刃物を主軸に取り付けて回転運動を与え、固定したワークに押し当てながら歯車をつくる工作機械です。 - 歯車研削盤
回転砥石を使って、歯車の形状を精密に仕上げるための歯切り盤です。 - 傘歯車歯切り盤
傘歯車の製造に特化した機械で、多数の刃物を一度に使って加工することができます。 - ギアシェーバ
ピニオンカッタやラックカッタを用いて歯を形成するための機械です。 - 歯車シェービング盤
切削後の歯車を最終的にきれいに仕上げるための機械。仕上げ工程にて出番のある機械です。
歯切り盤の主な用途・加工例
歯切り盤は、電気自動車やロボット、産業機械など、高精度な歯車が求められる分野で幅広く活躍しています。
産業機械とは?

次は産業機械についてです。
産業機械は、工場や製造現場で使われるいろんな種類の機械をまとめた呼び方で、主に大量生産や自動化を目的に開発されています。
こちらも明確に定義すると、以下の内容になります。
産業機械の定義
産業機械は、工場や事業所において使われている機械全般のことを指します。具体的には、建設、農業、木工機械の機械のことをいい、工作機械もここに含まれています。
たとえば、製造ラインで部品を組み立てるロボットや、大型のプレス機、製品をスムーズに運ぶためのコンベア、射出成形機などが代表的です。こうした機械のおかげで、生産効率が上がったり、作業者の負担が減ったり、安全性が高まったりしています。
産業機械も産業革命以前から存在しましたが、産業革命を経てさらに重要性が増しました。今では自動車産業や電子機器産業、食品産業など、さまざまな分野で活躍しています。
産業機械の種類

産業機械と一口に言っても、その役割や機能は多種多様です。ここでは、一部の主要なカテゴリーごとに機械の概要や代表的な種類、主な用途などを紹介していきます。
工作機械
先ほど説明した工作機械も産業機械の仲間です。工作機械は、金属や樹脂などの素材を切削したり、穴をあけたり、形を整えたりする機械の総称です。身近な製品の外観(形状)だけでなく、その内部部品の加工も含め、あらゆるモノづくりを支えています。たとえば金型製作や、金属板を打ち抜いて成形する加工も工作機械が担います。
工作機械の種類
- 旋盤
素材を回転させながら刃物で削る機械で、円筒形の部品加工が得意な機械です。 - フライス盤
回転するフライス工具を使って平面や溝、複雑な形状を切削する機械です。 - ボール盤
ドリルを回転させて穴をあけるための機械です。 - マシニングセンタ
数値制御(NC)と自動工具交換装置(ATC)を備えており、複数な工程を連続で加工できる機械です。
工作機械の主な用途・加工例
工作機械は切削加工(旋盤、フライス盤など)、穴あけ加工(ボール盤など)、複雑形状加工(マシニングセンタ、複合加工機など)、金型製作(さまざまな工作機械の組み合わせ)、金属板の打ち抜き(プレス工程での抜き加工など)で使用されます。
運搬機械
運搬機械は、モノや資材を移動・輸送するための設備や装置を指します。工場や倉庫、建設現場など、さまざまな場面で使用されています。こちらも産業機械に分類されます。
運搬機械の主な種類
- クレーン
重量物を吊り上げて移動させる機械で、ホイストクレーン、門型クレーンなど様々なタイプのクレーンがあります。 - 物流機器(システム構成機器)
パレットやコンベヤ、仕分け装置、自動倉庫など、物流や保管作業を効率化するための装置群です。 - 巻上機(ウインチ機構)
ロープやワイヤを巻き取りながら、重量物を引き上げる機械です。 - 昇降機
エレベーターやリフトなど、上下方向に人や製品を移動させるための装置です。
運搬機械の主な用途
運搬機械は、主に製品や部材の移動(工場内、建設現場、港湾施設など)、保管・仕分け(自動倉庫やパレットなどを用いた物流管理分野)、荷役作業(フォークリフトやクレーンなどでの積み下ろし)で使われています。
プラスチック機械
プラスチック機械は、樹脂製品を成形・加工するための産業機械を指します。射出成形機やブロー成形機などを用いて、ペットボトルや家電の外装、車の内装部品など多種多様なプラスチック製品を作り出します。
プラスチック機械の主な種類
- 射出成形機
熱で溶融した樹脂を用いて、金型内に高圧で射出・成形する機械です。 - ブロー成形機
加熱した樹脂をチューブ状にし、空気で膨らませて成形します。ブロー成形機はペットボトルなどを製造する際に利用されます。 - 圧縮成形機
加熱・加圧によって樹脂や複合材料を一定形状に押し固める機械です。
プラスチック機械のの主な用途・加工例
プラスチック機械は、射出成形による大量生産(家電外装、玩具、自動車用内装部品など)、中空容器の製造(ブロー成形によるペットボトル・タンクなど)、複合材料の成形(圧縮成形機を使った高機能樹脂部品)で使用されています。
製造機械
製造機械は、工場内で最終的な製品を作り出すために必要なあらゆる機械を指します。組立装置や塗装装置、組立ロボットなども含み、多様な形で生産工程を支えています。
製造機械の主な種類
- 組立装置・組立ライン
電子部品や機械部品を自動で組み付けるシステム群のことを指します。 - 塗装装置
製品に塗料を塗布することで、美観や耐久性を高めることができます。 - 自動組立ロボット
産業用ロボットを活用し、人手では難しい組立・接着などの工程を自動化する装置です。自動車の製造ラインなどで使われています。
製造機械の主な用途
家電製品や自動車の組立、製品の塗装やコーティング、パッケージング(自動包装ライン)で使用されています。
ボイラ・原動機
ボイラは燃料(石油・ガス・石炭など)を燃焼させ、その熱で水を加熱して高温の蒸気や温水を作り出す装置です。得られた蒸気や熱水は発電や暖房、工業用プロセスなどに利用されます。原動機は、その蒸気や気体のエネルギーを利用してタービンやエンジンを駆動し、動力や電力を生み出す機械を指します。
ボイラ・原動機の主な種類
- 発電用ボイラ
発電所などで使用され、大規模に蒸気を発生させタービンを回すタイプのボイラです。 - 産業用ボイラ
蒸気を使って、加熱・洗浄・乾燥などに用いるボイラで、工場に配置されているボイラがここに入ります。 - 内燃機関(ディーゼルエンジン、ガスタービンなど)
燃焼室で燃料を燃やすことで直接動力を得るタイプの原動機です。
ボイラ・原動機の主な用途
電力供給(火力発電所など)、工場ラインの熱源(蒸気を使う加熱工程や殺菌など)、暖房や空調設備(地域暖房、ビルの空調)で使用されています。
ほかにも、産業機械は化学機械、鉱山機械、風水力機械、業務用洗濯機などがあります。
工作機械と産業機械の違いは?

先ほどは、工作機械と産業機械それぞれの意味と用途について解説しました。
では、工作機械と産業機械の違いはどこにあるのでしょうか?
工作機械は精密な加工が必要な場面で使われていて、製品を正確な形や寸法に仕上げることに特化しています。航空機の部品や高精度な金属パーツの製造のように、厳しい品質が求められる場面では不可欠です。
一方で、産業機械は工場での大量生産や自動化を重視していて、スピーディーに大量の製品を作り上げることに重きを置いている機械です。このことから、大量生産が得意な機械や量産ラインに必要な機械のことを産業機械と呼んで工作機械と区別しています。
自動車の組み立てライン、射出成形機などの機械はたくさんの製品を効率よく作るときに優れていますよね。そうゆう場面で役立つ機械のことを指しているんです。
まとめると、「産業機械が大量生産を目的とするのに対して、工作機械は製品の精密さや品質向上に力を入れている」という点です。どちらも製造業を支える重要な機械であり、お互いを補い合いながら効率と品質の向上に貢献しています。
まとめ
今回は、工作機械と産業機械の違いについて解説しました。
どちらも製造現場になくてはならない存在ですが、それぞれ得意とする役割が明確に異なっていることがお分かりになったのではないでしょうか。
産業機械は大量生産や自動化で効率を高めるのが得意で、工作機械は精密な加工によって高い品質を実現するのに向いています。
両者が組み合わさることで、よりスピーディーかつ高品質なものづくりが可能となって、今の製造業界を支えているんです。
それでは今回はここまで。また次回の内容をお楽しみに!