せん断力図(S.F.D図)の基本的な考え方

材料力学ではりの問題を解くには、視点反力、せん断力図、曲げモーメントと順番に計算する必要があり、はりに対して垂直に作用する外力は、支点反力と荷重だけです。

ここではこれらの外力から、はりの内部に発生するせん断力を求めていきます。

同時に、材料力学のはり問題でよく出てくるせん断力の符号の決め方についても詳しく記載していますので、最後までご覧いただければ幸いです。

目次

せん断力とは?

せん断力 (Shear Stress) は、材料の断面に平行に働く力(せん断荷重)によって発生する内部応力のことを指します。はさみで紙が千切れるのは、このせん断力のおかげなのです。

せん断力が生じる例

ボルトやリベットなどの接合部

金属部品同士をボルト・ナットやリベットで締結している場合、接合部に水平方向の荷重がかかるとボルトやリベットの断面にせん断力が作用します。このことから、ボルトやリベットがせん断破断を起こさないように、適切な太さや数が必要です。

打ち抜き(パンチング)加工

金属板に穴を開ける「打ち抜き」加工では、パンチとダイ(金型)の間でせん断方向に力を加えることで、金属板に穴が開きます。打ち抜き時に金属板がちぎれるように割れるのは、まさにせん断力が働いた結果です。

もっと詳しく知りたい方はコチラ↓

仮想断面について

はりの内部に発生するせん断力を求めるのに必要な初期条件を先に記載します。

ここでは、両端支持はりに集中荷重が1つ作用している場合について考えます。

また、鉛直下向きの力を正(荷重w)、鉛直上向きの力を負(支点反力-RA、-RB)とします。

はりの内部にかかっているせん断力を求める際、「仮想断面x-x’」を使うと計算しやすくなります。

仮想断面x-x’はその名前の通り、仮想的にはりを切断します。切断することで、はり内部に発生している応力を正確に計算できるので、このように考えていきます。

ここでは、集中荷重を一つ受ける両端支持はりの水平右向きの方向を「+」の符号として、支点Aから「+」方向に支点Bまで移動する仮想断面x-x’を考えます(ほかの記事で記載しているのはり問題の計算も、すべてこの方向です)。

せん断力の正負・大きさについて

次は、せん断力図(S.F.D図)を描くにあたってのせん断力の向きと大きさについて解説します。

両端支持はりの支点反力RA、RBについては、下記の図から、

$$R_{A}=\frac{W}{2}$$

$$R_{B}=\frac{W}{2}$$

と計算出来ます。

とりあえず、せん断力の大きさはわかりましたね。

次に、正負についてです。

これを考えるためには、まず適当な場所で仮想断面x-x’を設定します。そして、仮想断面x-x’で仮想的に材料をを切り分けて、それぞれ左右の力のつりあいを考えていきます。

例えば、AC間のどこかの箇所で材料を切ったとします。すると、このような力のかかり方になっています。

ACの区間で発生するせん断力FACは、力のつり合い条件から求めることができます。

同様に、CBの区間で発生するせん断力FCBも同じように力のつり合い条件から求めるとこのようになります。

ここで、改めてせん断力FACとFCBを見てみると、2つのせん断力の組み合わせの向きがそれぞれ対になっていることがわかります。

今回の集中荷重1つを受ける両端支持はりでは、荷重点Cより左側のせん断力FACの大きさはRA、右側のせん断力FCBの大きさはRBになり、このことからせん断力の大きさは図から力のつり合いを求めることができます。

が、組み合わせの向きを示すための符号は現れません。

厳密に言うと、せん断力の力の方向は先ほどの計算で分かりましたが、せん断力の組み合わせの正負を表す符号はまだわかっていません。

ここ大事なことなので2回言いました。

そのため、基本的には「自分で正負の符号を設定してよい」ということになります。ただし、一度自分で定めた正負の符号の向きは問題の中で一貫して守ることが大前提となります。

次は、そのせん断力の符号の決め方に移りたいと思います。

せん断力図の符号の決め方

最後に、せん断力図(S.F.D図)の符号の決め方についてです。

ここがわかれば、あとはS.F,D図に落とし込んでいくだけです。

一緒に見ていきましょう。

考え方はこうです。

まず、仮想断面を基準に右向きの方向を正とした座標軸を考えます。

ここで先ほどの組み合わせの向きを思い出してほしいのですが、AC間の範囲で仮想的に切断した点せん断力FACは、

左側が-FAC

右側が+FAC

となっていましたね。

「仮想断面を基準に右向きの方向を正とした座標軸」と「せん断力FAC」の関係を図示するとこのようになります。

よく見てください。この図の「-FAC」の座標軸って「-」になっていますよね。

ここで、断面左側の「-FAC」のせん断力にさらに「-」をかけてみます。

するとどうなるでしょうか?

$$-(-F_{AC})$$

$$=+F_{AC}$$

となって、符号が反転します。つまり、-FACは+FACとなるのです。

同様に、CB区間で発生するFCBについても同じく「-」をかけると、今度はFCBが-FCBになります。

まとめると、

AC間のせん断力FACは「+」の符号

CB間のせん断力FCBは「-」の符号

となります。この法則を利用して、仮想断面の左側が上向きで右側が下向きに発生しているせん断力を「正のせん断力」、断面の左側が下向きで右側が上向きに発生しているせん断力を「負のせん断力」と定義します。

ほとんどの材料力学の教材ではこの符号を採用しています。

先ほど、「せん断力の正負・大きさについて」の項目で紹介したS.F.D図の符号と一致していますね。

以上のことから、仮想断面の左側の外力の合計が上向きで、右側の外力の合計が下向きになるときのせん断力を「+」、逆の場合を「-」とする符号が一般的に使用されている背景についてご理解いただけたかと思います。

まとめ

今回は、せん断力図(S.F.D図)の考え方と符号の決め方についてご紹介しました。

内容がピンポイントになってしまったので、詳しいはりの計算方法につきましては、別記事にて詳しく解説しています。そちらも併せてご確認いただければと思います。

この記事が誰かのお役に立てれば幸いです。

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