材料力学の勉強や課題で、はね出しはりのせん断力図(SFD)と曲げモーメント図(BMD)の描き方に悩んでいませんか?
本記事では、はね出しはりにおける基本的な力学の考え方から計算の手順、そして正しいSFD図・BMD図の描き方までを分かりやすく解説していきます。
これから学習を始める方はもちろん、すでに勉強中だけれど「この計算がよくわからない…」と困っている方にも役立つ内容となっています。ぜひ最後までご覧いただき、はね出しはり特有の計算や図の作成でのつまずきを一緒に解消していきましょう。
はね出しはりとは?
はね出し単純梁(はねだしたんじゅんばり)とは、支持している支点からはりがはね出している(はみ出ている)部分がある単純支持梁のことをいいます。

通常、単純支持はりは、梁の両端がピン支点やローラー支点などによって単純に支持されているだけの状態をいいますが、そこから一部支点を越えて延長(張り出し)されている場合、その延長部分(はね出し部分)のことを「はね出し単純梁」と呼び、材力のはり問題の一部として登場してきます。
はね出しはりは片側だけではなく、両側にはね出しがある形状もあります(下の図のような形状です)。

カンチレバーについて
上記のはね出しはりにおいて、片側がはね出している形状のことを「カンチレバー」と呼びます。
カンチレバーは日本語に訳すと片持ちはりのことをいいます。
カンチレバーは主に建築の分野で用いられる支持形式で、こうした構造を採用することで見た目に重厚感を与えず、軽快なデザインを生み出せるのが特徴です(参考:「カンチレバー 建築」で検索)。
主な使用例
例えば、バルコニーや片持ち形状の廊下などに応用することで、開放的な雰囲気を演出できます。木造建築の「持ち出し梁」もカンチレバーの一種であり、構造を工夫して柱を省略すればより軽やかなデザインに仕上げることが可能になります。
ただし、カンチレバー部分に上層階や屋根などの構造物を追加する場合は、その分荷重が増すため慎重な設計が求められます。また、どの程度張り出すかを検討する際には、はり本体の強度を考慮することが重要となります。
計算する前におさえておきたいポイント
今回計算しようとしているはね出しはりは、基本的にほかのはりの問題と解き方は一緒です。
しかし、荷重が作用している箇所が少々異なるので、符号の向きの間違いが起きやすいです。
ここではおさらいの意味も込めて各符号の正負について再度確認しておきましょう。
せん断力の符号
せん断力の符号は、どちらが上向き・下向きに力が発生しているかによって決めます(以下の図を参照)。

曲げモーメントの符号
曲げモーメントの正負については、反時計回りに力が働く方向を「+」とおき、時計周りに力が働く方向を「-」とおきます。

計算問題
例題
以下の図のようなスパン$l$のはね出しはりはりに、集中荷重を複数受けている場合のせん断力図(S.F.D.)と曲げモーメント図(B.M.D.)を作成しなさい。

例題の解答
①支点反力RA、RBの計算
支点Aを中心に反時計回りのモーメントを「+」、時計回りのモーメントを「-」とおき、モーメントの総和がゼロになるという条件を使って、まずは反力RBから求めます。
支点反力RB
$$(+300×300-500×300-200×700)+500R_{B}=0$$
$$=-200000+500R_{B}=0$$
$$500R_{B}=200000$$
$$R_{B}=400N$$
支点反力RA
荷重が下向きに働いているほうは「+」とおき、力の総和がゼロになるという条件を使って、次は反力RAを求めます。
$$+300+500+200-R_{B}-R_{A}=0$$
$$+300+500+200-400-R_{A}=0$$
$$600-R_{A}=0$$
$$R_{A}=600N$$
せん断力の計算
点Cに作用している荷重200Nを基準に、仮想断面を右方向に移動します。

S.F.D.図の作成
それぞれ荷重が作用している点の左側の断面を「+」、右側の断面を「-」として、S.F.D図を作成すると、以下の図のようになります。

曲げモーメントの計算
点Cを基準にせん断力図を描いたことから、-のせん断力を曲げモーメントの減少、+のせん断力を曲げモーメントの増加として表し、B.M.D図を作成します。
ここで、各点A~Eそれぞれを起点として右側に移動する仮想断面xを設け、それぞれの曲げモーメントを計算していきます(下図参照)。その際、各点A~Eの仮想断面の距離をx1~x4と置きます。

CA間の曲げモーメント
この範囲のせん断力は、「-」方向を表していることから、
$$M_{CA}=Fl$$
$$=-300x_{1}$$
点Aの曲げモーメント
x1のを起点を点Cからと考えると、
$$M_{A}=M_{C}-300×300$$
$$=0-90000Nmm$$
$$=-9.00×10^4Nmm$$
AD間の曲げモーメント
この範囲のせん断力は、「+」方向を表していることから、
$$M_{AD}=Fl$$
$$M_{AD}=+300x_{2}$$
点Dの曲げモーメント
x2のを起点を点Aからと考えると、
$$M_{D}=M_{A}+300×300$$
$$=-90000+90000$$
$$=0Nmm$$
DB間の曲げモーメント
この範囲のせん断力は、「-」方向を表していることから、
$$M_{DB}=Fl$$
$$=-200x_{3}$$
点Bの曲げモーメント
x3のを起点を点Dからと考えると、
$$M_{B}=M_{D}-200×200$$
$$=0-40000$$
$$=-40000Nmm$$
$$=-4.00×10^4Nmm$$
BE間の曲げモーメント
この範囲のせん断力は、「+」方向を表していることから、
$$M_{DB}=Fl$$
$$=+200x_{4}$$
点Eの曲げモーメント
x4のを起点を点Bからと考えると、
$$M_{E}=M_{B}+200×200$$
$$=-40000+40000$$
$$=0Nmm$$
B.M.D.図の作成
上記で求めた値を使いB.M.D図を作成すると、以下の図のようになります。

まとめ
今回は、はね出しはりの計算方法について解説しました。
支点を越えてはみ出している部分の扱いは、通常の単純支持はりと異なる点ですので注意が必要です。
はね出し部分の反力、その区間のせん断力や曲げモーメントの符号、大きさの変化を順に追っていけば、正しくSFD図・BMD図を作成できます。
ぜひ、今回の解説を参考にしていただき、実際に手を動かしながら問題を解き進めてみてください。