今回は、一部の区間に等分布荷重が発生している場合の片持ちはりについて考えていきたいと思います。このテーマを学ぶことで、はりの設計や荷重分布の影響を具体的に理解し、実際の計算に役立つ知識を深めることができます。
前回ご紹介したこちらの記事では、はりのすべてに等分布荷重が作用している場合の内容で、今回の内容は一部の区間にのみ荷重がかかる場合の問題を取り扱います。
せん断力図(S.F.D図)と曲げモーメント図(B.M.D図)の分布が少し異なります。

本記事でも、具体的な計算例を用いて詳しく解説していきます。計算を解くうえで役立つヒントや注意点も併せて紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
一部の区間に等分布荷重が発生している場合の片持ちはり
ここから早速、一部の区間に等分布荷重が発生している場合の片持ちはりについて、計算していきます。
以下のような図で、はりの一部分に1N/mmの等分布荷重が作用している場合を考えてみます。

今回の場合、はり全体に等分布荷重がかかっているケースと比較して、荷重が作用する区間外では内部応力が発生しない点が特徴です。
支点反力の計算
支点反力RB
等分布荷重w、長さ$l_{1}$による全荷重を始点Bで受けているので、
$$R_{B}=wl_{1}=1×350$$
$$=350N$$
となります。
支点反力RA
一方でRAについては、自由端になっているため支点が存在せず、反力も発生しません。したがって、
$$R_{A}=0$$
となります。
せん断力の計算
せん断力の計算方法は、自由端Aから固定端Bに向かって仮想断面「x-x’」を仮想的に移動させて考えます。
AC間では等分布荷重を受け、CB間では荷重の変化がないことから、2つに区分けしてそれぞれのせん断力を求めていきます。
それぞれの区間のせん断力について
最初に、それぞれの区間の式に適用できる一般式を立式し、そのあとそれぞれの区間のせん断力を求めていきます。
AC間のせん断力(0 ≤ x ≤ l₁)
AC間に発生するせん断力$F_{AC}$の一般式は、
$$F_{AC}=-wx ・・・(1)$$
となります。ここで、$F_{AC}$の一般式は、$x$の一時関数で右下さがりの直線となります。
この式(1)を用いて、点Aと点Cのせん断力を求めると、
$$点Aのせん断力F_{A}=-wx$$
$$=-1×0$$
$$=0N$$
$$点Cのせん断力F_{C}=-wx$$
$$=-1×350$$
$$=-350N$$
となります。
CB間のせん断力(l₁ ≤ x ≤ l)
CB間に発生するせん断力$F_{CB}$では外力に変化がないため、等分布荷重の全荷重と等しくなります。
$$せん断力F_{CB}=-wl_{1} ・・・(2)$$
$$=-1×350$$
$$=-350N$$
曲げモーメントの計算
せん断力と同様に、等分布荷重を受けているAC間と、荷重変化のないCB間にそれぞれ分けて曲げモーメントを考えます。
それぞれの区間の曲げモーメントについて
AC間の曲げモーメント(0 ≤ x ≤ l1)
AC間に発生する曲げモーメント$M_{AC}$の一般式は、
$$M_{AC}=-\frac{wx^2}{2} ・・・(3)$$
となります。ここで、$M_{AC}$の一般式は、$x$の二時関数で上に凸の放物線になります。
この式(3)を用いて、点Aと点Cの曲げモーメントを求めると、
$$点Aの曲げモーメントM_{A}=-\frac{wx^2}{2}$$
$$=-\frac{1×0^2}{2}$$
$$=0Nmm$$
$$点Cの曲げモーメントM_{C}=-\frac{wx^2}{2}$$
$$=-\frac{1×350^2}{2}$$
$$=-61250$$
$$=0.61×10^5Nmm$$
となります。
CB間の曲げモーメント(l₁ ≤ x ≤ l)
CB間に発生する曲げモーメント$M_{CB}$の一般式は、
$$M_{CB}=-wl_{1}(x-\frac{l_{1}}{2}) ・・・(4)$$
となります。ここで、$M_{CB}$の一般式は、$x$の一時関数で右下がりの直線になります。
導出の経緯
下記の図を見てみると、式(4)は等分布荷重の真ん中に1つの集中荷重を仮想的に置いて立式していることがわかります。

この式(4)を用いて、点Cと点Bの曲げモーメントを求めると、
$$点Cの曲げモーメントM_{C}=-wl_{1}(x-\frac{l_{1}}{2})$$
$$=-1×350(350-\frac{350}{2})$$
$$=-61250$$
$$=-0.61×10^5Nmm$$
$$点Bの曲げモーメントM_{B}=-wl_{1}(x-\frac{l_{1}}{2})$$
$$=-1×350(1000-\frac{350}{2})$$
$$=-288750$$
$$=-2.88×10^5Nmm$$
となります。
S.F.D.図とB.M.D図の作成
以上の計算結果をグラフとしてまとめると、このようになります。

まとめ
ここまで、一部の区間に等分布荷重が作用している場合の片持ちはりの支点反力・せん断力・曲げモーメントを、具体例を通して解説してきました。
支点反力やモーメント図は、はりの問題を考えるうえで非常に重要な要素です。
これからも、ほかの材力関係の基礎をわかりやすく解説する記事を増やしていく予定です。
他の記事も参考にしていただければ幸いです。