今回は等分布荷重の場合について解説していきます。
この記事では等分布荷重のSFD図とBMD図の描き方について、初心者の方でも理解しやすいように、具体例や図を交えながら説明します。
等分布荷重の力学的な意味や、図を描く際に押さえておきたい注意点についても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
等分布荷重とは?
等分布荷重(Uniformly Distributed Load, UDL)とは、単位長さあたりに一定の荷重が均等に分布して作用する状態を指します。
この荷重は、建築や土木の設計で頻繁に現れる基本的な荷重条件の一つです。特に橋梁や建物の床板、屋根など、長さや面積に対して荷重が均等にかかる場面で考慮されます。
図で表すとこのような荷重のことを指します。

等分布荷重の荷重Wの単位はN/mmで表します。
集中荷重がかかっているときはNでしたが、等分布荷重では荷重が力が等間隔に分布しているため、単位長さあたりの力として表現するためこのような単位になります。
このため、「どれくらいの力が1メートルあたりにかかっているか」という情報が重要になります。
集中荷重と異なる点に注意です。
両端支持はりに等分布荷重が作用している場合は、下記の図を暗記すると簡単に求められます。

本記事ではその導出方法について詳しくしています。
この内容が分かれば様々なはり問題を簡潔に解くことができるようになりますので、ぜひ最後まで御覧いただければと思います。
支点反力の考え方
はりに等分布荷重が発生している場合、その荷重を集中荷重に換算することで計算を簡略化することができます。
具体的には、全荷重が集中荷重として等分布荷重の真ん中に1つだけ作用していると考えます。
この状態で、力のモーメントと力のつり合い条件から支点反力を求めていきます。

上記の図をもとに、支点反力RA、RBそれぞれの計算手順を見ていきましょう(ここでは回転支点Aを中心として力のモーメントの総和を求めていきます)。
荷重$wl$、回転支点Aを中心として力のモーメントを計算すると、力の総和がゼロになることから、
$$-wl\frac{l}{2}+R_{B}l=0$$
$$R_{B}l=wl\frac{l}{2}$$
$$R_{B}=\frac{wl}{2}$$
力の総和はゼロなので、
$$R_{A}+R_{B}=wl$$
$$R_{A}=wl-R_{B}$$
$$R_{A}=\frac{wl}{2}$$
せん断力の考え方
せん断力は、左側の回転支点Aから任意の位置$x$にある仮想断面「x-x’」の左側部材のせん断力FXの一般式を求めていきます。
その後、仮想的に設定した「x-x’」断面を$0≦x≦l$の範囲でスライドさせて、各せん断力を求めます。
この時、仮想断面を基準に左向きを-方向、支点Bに向かう方向を+方向と定義して計算を進めていきます。
また、鉛直上向きの荷重(支点反力RA、RB)を-、鉛直下向きの荷重(はりに作用している等分布荷重)を+と決め、せん断力図を作成していきます。
言葉だけで説明すると難しく聞こえそうなので、具体的な計算手順を載せました。下記に図も記載していますので、それぞれ一緒に見ていきましょう。

力の総和がゼロという条件から、
$$R_{A}+R_{B}=wl$$
$$R_{A}=wl-R_{B}$$
$$R_{A}=\frac{wl}{2} ・・・(1)$$
式(1)よりそれぞれの支点反力は、
$$R_{A}=R_{B}=\frac{wl}{2} ・・・(2)$$
となります。先ほど求めた支点反力RA、RBと同じ式になっていますね。
せん断力の一般式FXはこのように求めていきます。
$$F_{X}=-(-R_{A}+wx) ・・・(3)$$
各符号の意味についてはそれぞれこのような理由があります。

式(3)のRAに式(2)で求めた値を代入すると、
$$F_{X}=-(-R_{A}+wx)$$
$$=R_{A}-wx$$
$$=\frac{wl}{2}-wx$$
$$=\frac{wl}{2}-wx$$
$$=w(\frac{l}{2}-x) ・・・(4)せん断力はxの1次関数$$
せん断力FXの一般式が導けたので、最後は式(4)を用いて各支点反力で発生しているせん断力を求めていきます。
支点Aを起点としてモーメントの計算をここまでやってきましたので、その条件も用いると、
$①支点Aでx=0より$
$$F_{A}=w(\frac{l}{2}-x)$$
$$=w(\frac{l}{2}-0)$$
$$=\frac{wl}{2}$$
$②支点Bでx=lより$
$$F_{B}=w(\frac{l}{2}-x)$$
$$=w(\frac{l}{2}-l)$$
$$=-\frac{wl}{2}$$
となります。ここで求めたFA、FBはあとで描くせんだん力図で使います。
曲げモーメントの考え方
次は曲げモーメントについてです。
仮想断面「x-x’」の左側の荷重wxでは、仮想断面上の点Pから$=\frac{x}{2}$の点に作用する集中荷重に等しいとみなして、曲げモーメントMの一般式を導出していきます。

まずは曲げモーメントの一般式を定義します。曲げモーメントMは、特定の位置xでの梁の内部におけるモーメントの大きさを示します。このとき、静力学の釣り合いから以下が成り立ちます。
$$左側のモーメントの合計=0$$
上記を考慮して、釣り合いの条件として以下の式を得ます。
$$R_{A}x+wx\frac{x}{2}+M=0$$
$$M=R_{A}x-wx\frac{x}{2}$$
$$=\frac{wl}{2}x-w\frac{x^2}{2}$$
$$=\frac{w}{2}(lx-x^2) ・・・(5)曲げモーメントは上に凸のxの2次関数$$
ポイント
- この式は、梁の左側の力とモーメントを使ってxにおける曲げモーメントを表現しています。
- 静力学の釣り合い条件(力とモーメントの合計がゼロ)を使うことがキーポイントです。
以降のステップでは、この式(5)を使用していきます。
$支点Aではx=0より、$
$$M_{A}=\frac{w}{2}(lx-x^2)$$
$$=\frac{w}{2}(l×0-0^2)$$
$$=0$$
$支点Bではx=lより、$
$$M_{B}=\frac{w}{2}(lx-x^2)$$
$$=\frac{w}{2}(l×l-l^2)$$
$$=0$$
$最大値M_{MAX}ではx=\frac{l}{2}より、$
$$M_{MAX}=\frac{w}{2}(lx-x^2)$$
$$=\frac{w}{2}(l×\frac{l}{2}-(\frac{l}{2})^2)$$
$$=\frac{w}{2}(\frac{l^2}{2}-\frac{l^2}{4})$$
$$=\frac{w}{2}(\frac{2l^2}{4}-\frac{l^2}{4})$$
$$=\frac{w}{2}(\frac{l^2}{4})$$
$$=\frac{wl^2}{8}$$
せん断力図(S.F.D図)と曲げモーメント図(B.M.D図)
以上の結果をせん断力図(S.F.D図)と曲げモーメント図(B.M.D図)で表すとこのようになります。

両端支持はりに等分布荷重が発生している場合のせん断力図(S.F.D図)と曲げモーメント図(B.M.D図)の計算方法はこのように導出できます。
これらの内容をおさえて、次は実際によく出題される演習問題に取り組んでみましょう。
計算問題
例題
全長500mmの両端支持はりに、1N/mmの等分布荷重が全体にわたって作用している場合のSFD図(せん断力図)とBMD図(曲げモーメント図)を作図しなさい。

例題の解答
①支点反力RA、RBについて
$$R_{A}=R_{B}=\frac{wl}{2}=\frac{1×500}{2}$$
$$=250N$$
②支点A、支点Bのせん断力について
$$支点Aのせん断力F_{A}=R_{A}=+500N$$
$$支点Bのせん断力F_{B}=-R_{B}=-500N$$
③支点A、支点Bの曲げモーメント、中心の最大曲げモーメントについて
$$支点Aの曲げモーメントM_{A}=0$$
$$支点Bの曲げモーメントM_{B}=0$$
$$最大曲げモーメントM_{MAX}=\frac{wl^2}{8}$$
$$=\frac{1×500^2}{8}$$
$$=31250=31.25×10^3Nmm$$
④せん断力図(S.F.D図)と曲げモーメント図(B.M.D図)

まとめ
今回は両端支持はりにおける等分布荷重のSFD図とBMD図の描き方を詳しく解説しました。
せん断力図(SFD)や曲げモーメント図(BMD)は、構造物の設計や解析において非常に重要な役割を果たします。
特に等分布荷重の場合は、基本的な考え方を押さえればさまざまな場面で応用が可能です。
今回の内容を参考にして、ぜひご自身でも問題を解いて理解を深めてみてください!