片持はりのSFD図とBMD図の描き方

片持はりのSFD図やBMD図を正確に描くためには、やっぱり基本的な力学の理解が欠かせません。とはいえ、はじめのうちは「せん断力図」「曲げモーメント図」といった用語だけでも少し難しく感じてしまうかもしれませんね。

そこで本記事では、初心者の方でもスムーズに理解できるよう、ステップバイステップ形式で図の描き方を丁寧に解説していきます。

「ここでつまづいたらどうしよう…」と心配な方もいるかもしれませんが、安心してください。一つひとつの工程をしっかり押さえていけば、片持はりのせん断力図(S.F.D図)や曲げモーメント図(B.M.D図)は必ず描けるようになります。

わかりやすい図を作図できるようになると、はりの力の流れが目で見て実感できるので、力学の理解がぐっと深まるはずです。

本記事を読み進めることで、描き方のコツや注意点を把握できるようになり、材力のはり問題にも強くなれるよう構成しています。まずは難しく考えず、「この手順で作図すれば大丈夫なんだ」という気持ちで気軽に読み進めてみてください。少しでも疑問に感じるところがあれば、図にメモをとったり、実際に紙に書いて確認するなど、手を動かしながら学ぶのがおすすめですよ。

それでは、一緒に片持はりのSFD図とBMD図をマスターしていきましょう!

目次

片持はりとは?

片持はりとは、片方の端が固定され、もう一方の端が自由に動くようになっている構造物のことを指します。

図で表すとこのような状態です。

建築構造や機械工学の分野でよく用いられる基本的なはり(梁)の一種です。

また、片持ちはりは以下のような特徴がみられます。

片持はりの特徴

  1. 固定端:片方の端は壁や柱などにしっかり固定されており、回転や移動ができないように支持されています。
  2. 自由端:もう片方の端は、外力を受けることで自由に動ける状態になっています。
  3. 外力の作用:自由端に外力(例えば集中荷重や分布荷重)がかかると、はり内部にせん断力(Shear Force)や曲げモーメント(Bending Moment)が発生します。

片持はりは、これらの特徴から看板やバルコニー、クレーンのアームなどの構造物に多く見られる形状です。

曲げモーメントについて

次に曲げモーメントについてです。曲げモーメントとは、はりなどの構造物に外力が加わった際に、内部で発生する「曲げる力」のことを指します。

曲げモーメントは、構造物がどの程度たわむか、またどの部分に大きな応力が集中するかの度合いを示す重要な概念です。

本記事で作図しようとしている曲げモーメント図は、はり内部で発生する曲げモーメントの分布を視覚的に示したグラフです。

はりにかかる荷重の種類や位置によって曲げモーメントの値が異なり、それを正確に表すのがBMDですので、曲げモーメントの理解は、曲げモーメント図を作図するために必要不可欠な知識となります。

ぜひここで曲げモーメントのポイントをおさえておきましょう。

曲げモーメントの基本

曲げモーメントは、外力によってはりの内部で発生する「回転の力」を示します。単位は通常「N・m(ニュートンメートル)」や「kN・m(キロニュートンメートル)」で表されます。

曲げモーメントは以下の式で求められます。

$M=F×L$

M:曲げモーメント
F:加わる外力
$L$:外力の作用点から考慮する点までの距離(モーメントアーム)

集中荷重が1つ作用している片持ちはりについて

演習問題に取り組む前段階として、集中荷重が1つ作用している片持ちはりについて解説します。

例えば、下図のようなスパン長1000mmのはり部材の片方の自由端に、100Nの集中荷重が1つ作用している場合について考えていきたいと思います。

この場合の支点反力、せん断力、曲げモーメント、せん断力図(S.F.D図)、曲げモーメント図(B.M.D図)はどのように計算していけばいいのでしょうか?

順番に見ていきましょう。

支点反力の計算

片持ちはりの場合の支点反力は、固定端ですべての荷重を支えているため、荷重の総和がそのまま支点反力になります。よって、

$$支点反力R_{B}=100N$$

となります。

一方、支点反力RAは自由端となっているため、反力は発生しないので、

$$R_{A}=0$$

となります。

せん断力の計算

片持ちはりに集中荷重1つかかっているときのせん断力は、荷重wに相当するので、

$$せん断力F_{AB}=-w$$

$$=-100N$$

となります。

曲げモーメントの計算

ここでは、自由端Aから固定端Bに仮想断面xを計算したい距離まで移動させて、曲げモーメントを求めていきます。

自由端Aに100Nの荷重が発生し、かつ仮想断面が0≦x≦1000の範囲のときのAB間の曲げモーメントは、

$$M_{AB}=-100x$$

で表すことができ、この上式を一般式として扱います。

ここからこの一般式を用いて、それぞれの曲げモーメントを計算していきます。

点Aの曲げモーメント

点Aの曲げモーメントは、

$$点Aの曲げモーメントM_{A}=Fx$$

$$=-100×0$$

$$=0$$

となります。

点Bの曲げモーメント

点Bの曲げモーメントは、

$点Bの曲げモーメントM_{B}=Fx$$

$$=-100×1000$$

$$=-1×10^5Nmm$$

となります。

せん断力図(S.F.D図)と曲げモーメント図(B.M.D図)の作成

以上の計算結果から、片持ちはりに集中荷重が作用したときの計算と図示方法はこのようになります。

以上で、すべての計算が完了しました。

意外と簡単だったのではないでしょうか。

次は、実際に演習問題に取り組んでみましょう。

計算問題

例題

次のようなスパン長1000mmの片持ちはりにそれぞれ300N、600N、200Nの荷重が作用しているときの反力とせん断力図・曲げモーメント図を作図しなさい。(せん断力は下向きの力を+、上向きの力を-とします。)

例題の解答

①支点反力RBの計算

固定端Bの支点反力は、それぞれの荷重の総和が支点反力となるので、

$支点反力R_{B}=300+600+200=1100N$

②せん断力図(S.F.D図)の作成

支点反力と集中荷重がかかる点では、それぞれの大きさがせん断力の変化分になります。

①支点反力RBの計算と②せん断力図の作図までをまとめると以下のようになります。

③曲げモーメント図(B.M.D図)の作成

【AC間について】

$仮想断面が0≦x≦350の範囲で、この範囲の曲げモーメントは、$

$M_{AC}=-300x$

となる。点Aと点Cの曲げモーメントをそれぞれ計算すると、

$M_{A}=-300x$
$=-300×0$
$=0$


$M_{C}=-300x=-300×350$
$=-105000$
$=-1.05×10^5Nmm$
※1

【CD間について】

$仮想断面が350≦x≦750の範囲で、この範囲の曲げモーメントは、$

$M_{CD}=-300x-600(x-350)$

となる。点Cと点Dの曲げモーメントをそれぞれ計算すると、

$M_{C}=-300x-600(x-350)$
$=-300×350-600(350-350)$
$=-105000$
$=-1.05×10^5Nmm$
※2


$M_{D}=-300x-600(x-350)$
$=-300×750-600(750-350)$
$=-465000$
$=-4.65×10^5Nmm$
※3

【DB間について】

$仮想断面が750≦x≦1000の範囲で、この範囲の曲げモーメントは、$

$M_{DB}=-300x-600(x-350)-200(x-750)$

となる。点Dと点Bの曲げモーメントをそれぞれ計算すると、

$M_{D}=-300x-600(x-350)-200(x-750)$
$=-300×750-600(750-350)-200(750-750)$
$=-465000$
$=-4.65×10^5Nmm$
※4


$M_{B}=-300x-600(x-350)-200(x-750)$
$=-300×1000-600(1000-350)-200(1000-750)$
$=-740000$
$=-7.40×10^5Nmm$

すべての曲げモーメントを計算できたので、これをB.M.D図に落とし込むと以下のような図になります。

ポイント

※1※2のMC※3※4のMDにつきましては、計算の整合性をとるためにあえて分割して計算しています。計算方法を把握していれば、どちらか一方を導出するとよいでしょう。

片持ちはりの種類

片持ちはりは、力のかかり方によってせん断力図(S.F.D図)と曲げモーメント図(B.M.D図)の作図方法が少し変わり、以下のような違いがあります。

それぞれ求め方はそんなに難しくはないので、暗記して覚えてもよいでしょう。

まとめ

今回は片持はりのSFD図とBMD図を描く方法について解説しました。

ここでは具体的な計算手順、そして図の描き方までを網羅的に取り上げました。以下のポイントを押さえておくと、より一層実際の計算問題にも応用できるかと思います。

  • SFD図とBMD図の基本的な違い
    SFD図はせん断力を、BMD図は曲げモーメントを視覚的に表すもの。それぞれの特徴を理解しておくことで、構造物の挙動を正確に把握しましょう。
  • 計算手順の重要性
    最初に支点反力、次はせん断力、最後にモーメントと順序立てて計算することで、正確なSFD図とBMD図を描く基盤ができます。
  • 実践と理解を繰り返すこと
    計算方法を理解したら、実際に計算問題を解いて練習しましょう。多くのケースに触れることで、実務でも即座に対応できるスキルが身につきます。自分で荷重やスパン長などいろいろと初期条件を変えてみるのもいいと思います。

片持はりは材料力学において基本的な構造であり、他の複雑な構造にも応用可能な知識です。

この記事をきっかけに、さらに深い構造力学の理解を目指してみてください。

もし他の種類のはりや構造についても興味がある場合は、ぜひ関連する記事もご覧ください!

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