今回は両端支持はりの一部に、等分布荷重が作用する場合のSFD図とBMD図を考えていきます。
はりの問題は材料力学を学ぶうえでとても重要な内容で、特に等分布荷重が作用する場合のせん断力図(S.F.D図)や曲げモーメント図(B.M.D図)は構造の強度や安定性を評価する上で重要な情報となります。
そこでこの記事では、等分布荷重が両端支持はりの一部に発生している場合についての基本的な考え方を説明していきたいと思います。
今回紹介する計算問題の求め方はほかのはり問題と一緒で、最初に各支点反力の計算から始め、次にせん断力・曲げモーメント、最後にSFD図とBMD図の作成に取り掛かります。
等分布荷重がどのように作用し、はり全体にどのような応力分布を生じさせるのか、ここを理解することでほかの材力計算にも役立てることができます。
それでは早速見ていきましょう。
両端支持はりの一部に等分布荷重が作用する場合
今回は両端支持はりの一部に、等分布荷重が作用する場合のSFD図とBMD図を考えていきます。
両端支持はりすべてに等分布荷重が作用している場合については、以下の記事にて解説しています。

例として以下の図のはりに、ある特定の範囲だけ等分布荷重が発生しているとします。

支点反力の計算
今回の場合、等分布荷重の中央に集中荷重が作用していると仮定して、力のモーメントと力のつり合いから支点反力を求めます。
図で表すとこのようなイメージです。

等分布荷重の真ん中に1つ集中荷重が発生しているものとして、それぞれ支点反力RA、RBを計算していきます。
移動支点RBの計算
支点Aを中心とすると、力のモーメントの総和はゼロの条件より、
$$-w(l_{2}-l_{1})\frac{l_{1}+l_{2}}{2}+R_{B}l=0$$
$$\frac{-w(l_{2}-l_{1})(l_{1}+l_{2})}{2}+R_{B}l=0$$
$$\frac{-w(l_{2}^2-l_{1}^2)}{2}+R_{B}l=0$$
$$R_{B}=w\frac{(l_{2}^2-l_{1}^2)}{2l} ・・・(1)$$
が得られます。
回転支点RAの計算
一方、回転支点RAは力の総和はゼロの条件を使って計算すると、
$$w(l_{2}-l_{1})-R_{B}-R_{A}=0$$
$$R_{A}=w(l_{2}-l_{1})-R_{B} ・・・(2)$$
と算出できます。

次は、せん断力の計算に移っていきます。
せん断力の計算
せん断力については、等分布荷重が作用する区間と作用しない区間に分けて考えます。
そして、支点Aから支点Bに向かって仮想断面「x-x’」を仮想的に移動させ、それぞれのせん断力を求めていきます。

それぞれの区間のせん断力について
1. 区間AC(0 ≤ x ≤ l₁)
AC間では等分布荷重が作用していないため、せん断力は支点反力$R_{A}$のみによって決まります。
この区間では、断面「x-x’」の左側には$R_{A}$以外の力が存在しないため、せん断力は+方向に一定となります。
式で表すと、
$$F_{AC}=+R_{A} ・・・(3)$$
となります。
2. 区間CD(l₁ ≤ x ≤ l₂)
CD間では等分布荷重wが作用するため、せん断力は次第に変化します。この変化は、仮想断面「x-x’」が右側に進むにつれて、等分布荷重の累積効果が加わるからです。
そのため、CD間のせん断力$F_{CD}$で$l_{1}≦x≦l_{2}$の区間では等分布荷重が加わるため、せん断力は直線的に変化します。
$$F_{CD}=R_{A}-w(x-l_{1}) ・・・(4)$$
3. 区間DB(l₂ ≤ x ≤ l)
DB間では、等分布荷重が作用しなくなり、右端の支点反力$R_{B}$のみが作用します。
この区間では、仮想断面「x-x’」の左側には$R_{A}$と等分布荷重が作用していた部分があり、右側は$R_{B}$だけが作用します。そのため、区間DBではせん断力がマイナス方向で一定の値を保ちます。
式で表すと、
$$F_{DB}=-R_{B} ・・・(5)$$
となります。
4. せん断力がゼロになる位置
ここでは距離の内容になります。
区間CD内では、せん断力がゼロになる点(xm)が存在します。この位置を求めるには、式(4)を用います。せん断力がゼロとなる条件を考えると、
$$R_{A}-w(x_{m}-l_{1})=0$$
$$w(x_{m}-l_{1})=R_{A}$$
$$x_{m}-l_{1}=\frac{R_{A}}{w}$$
$$x_{m}=\frac{R_{A}}{w}+l_{1} ・・・(6)$$
となります。ちなみに、この位置(mm)で曲げモーメントが最大となります。
曲げモーメントの計算
曲げモーメントは、せん断力が一定の区間では直線になり、せん断力が1次関数で変化する区間では2次関数の放物線を描くことになります。
ここについても順番に見ていきましょう。
それぞれの区間の曲げモーメントについて
1. 区間AC(0 ≤ x ≤ l₁)
AC間の曲げモーメントは、支点反力$R_{A}$による影響のみを考慮します。この区間では、仮想断面「x-x’」の左側に$R_{A}$だけが作用しているため、曲げモーメントは直線的に増加します。
式で表すと、
$$M_{AC}=+R_{A}x ・・・(7)$$
となり、この式から区間ACでは曲げモーメントがxに比例して増加することがわかります。
2. 区間CD(l₁ ≤ x ≤ l₂)
CD間の曲げモーメント$M_{AC}$では、支点反力$R_{A}$に加えて、等分布荷重$w$の影響を考慮します。
等分布荷重が作用するため、曲げモーメントは二次関数の形状をとります。
力のモーメントの総和を使って式で表すと、
$$M_{CD}=R_{A}x-w(x-l_{1})\frac{x-l_{1}}{2}$$
$$=R_{A}x-\frac{w(x-l_{1})^2}{2} ・・・(8)$$
が得られます。
3. 区間DB(l₂ ≤ x ≤ l)
DB間の曲げモーメントは、右端の支点反力$R_{B}$の影響を考慮します。
この区間では、仮想断面「x-x’」の左側に等分布荷重と支点反力$R_{A}$が作用し、右端では$R_{B}$が作用します。そのため、曲げモーメントは直線的に減少します。
式で表すと、
$$M_{DB}=R_{B}(l-x) ・・・(9)$$
となり、この式から区間DBでは曲げモーメントがxに反比例して減少することがわかります。
最大曲げモーメントについて
曲げモーメントの最大値は、せん断力がゼロとなる位置($x_{m}$)で発生します。
このことから、式(8)のxにxmの数値を代入することで、最大曲げモーメントを求めることができます。
これにより、BMD図を正確に描く際の基準がひとつ出来上がります。
S.F.D.図とB.M.D図の作成
以上の計算結果をグラフとしてまとめると、以下のようになります。

計算問題
例題1
スパン500mmの両端支持はりが、その一部に1N/mmの等分布荷重を受けている場合のせん断力図(S.F.D.)と曲げモーメント図(B.M.D.)を作成しなさい。

例題の解答
①支点反力RA、RBの計算
式(1)を使ってRBを求めます。
$$R_{B}=w\frac{(l_{2}^2-l_{1}^2)}{2l}$$
$$=1×\frac{(410^2-260^2)}{2×500}$$
$$=100.50N$$
式(2)を使ってRAを求めます。
$$R_{A}=w(l_{2}-l_{1})-R_{B}$$
$$=1×(410-260)-100.5$$
$$=49.5N$$
②せん断力の計算
AC間のせん断力は、
$$F_{AC}=+R_{A}=+49.5N$$
DB間のせん断力は、
$$F_{DB}=-R_{B}=-100.5N$$
せん断力がゼロになる点は式(6)より、
$$x_{m}=\frac{R_{A}}{w}+l_{1}$$
$$=\frac{49.5}{1}+260$$
$$=309.5mm(曲げモーメント図を描く際にこの値は使用)$$
③曲げモーメントの計算
点Cの曲げモーメントは式(7)より、
$$M_{C}=+R_{A}x$$
$$=49.5×260$$
$$=12870=12.87×10^3Nmm$$
点Dの曲げモーメントは式(9)より、
$$M_{D}=R_{B}(l-x)$$
$$=100.5(500-410)$$
$$=9045=9.04×10^3Nmm$$
④最大曲げモーメントの計算
最大曲げモーメントは式(8)より、
$$M_{max}=R_{A}x-\frac{w(x-l_{1})^2}{2}$$
$$=49.5×309.5-\frac{1(309.5-260)^2}{2}$$
$$=14095.125=14.09×10^3Nmm$$
⑤せん断力図と曲げモーメント図

まとめ
この記事では、両端支持はりの一部に等分布荷重が作用する場合のSFD図とBMD図を詳しく解説しました。
等分布荷重が作用する場合の問題は、力のモーメントやつり合い条件を正確に設定することが重要です。また、せん断力や曲げモーメントの変化をグラフで視覚化することで、部材がどのように応力を受けているかを明確に把握できます。
この知識は、建築や土木工学の実務において、はり構造の安全性や耐久性を評価する際に非常に有用です。今後さらに複雑な荷重条件にも応用できるよう、基本的な理論と手法を繰り返し練習してみてください。