今回は2つ異なる荷重が両端支持はりに作用したら、いったいどのような力の伝わり方や変形が生じるのか、その具体的なメカニズムを押さえながら詳しくご紹介します。
(等分布荷重と集中荷重を受ける片持ちはりのSFD図とBMD図の描き方はコチラ↓)

たとえば、等分布荷重ははり全体にわたって均等に作用するため、各断面にかかるせん断力や曲げモーメントは広範囲に分布します。

一方、集中荷重は一点または限定された小範囲に集中的に作用するので、局所的に大きな応力や変形が発生しやすくなります。

それでは、同じはりに複数の荷重が組み合わさった場合はどうなるでしょうか?
S.F.D図(せん断力図)やB.M.D図(曲げモーメント図)はどのように描けばいいのでしょうか?
ここの内容も正しく理解することが、材料力学を学ぶうえで非常に大切です。
今回ご紹介する内容をしっかりと理解しておけば、ほかの材料力学のはり問題においても、落ち着いて取り組むことができるようになるでしょう。
実際、複数の荷重に対してS.F.D図(せん断力図)やB.M.D図(曲げモーメント図)を正しく描けるようになれば、はりの挙動をより正確に把握でき、計算問題の正答率を高めることができるようになります。
それでは早速、2つの異なる荷重が両端支持はりに作用したらどうなるのか、その内容についてご紹介します。
等分布荷重と集中荷重を受ける両端支持はりの問題の解き方
今回はこのような1N/mmの等分布荷重と300Nの集中荷重を受けている状態のはりを想定して、計算していこうと思います。

この条件で、いつものように支点反力RA、RBから求めていき、そのあとせん断力図、曲げモーメント図を描いていくのですが、ここで一つ重要なポイントがあります。
それは、今回のような2つの異なる荷重が作用している場合、集中荷重を受けるはりと等分布荷重を受けるはり2つに分けて考えます。
そして、個別に計算したら、それらを合算してせん断力図(S.F.D図)と曲げモーメント図(B.M.D図)を作成します。
どうゆうことなのかいまいちピンとこない方も大丈夫、安心してください。
下の項目で詳しく解説していますので、それぞれ見ていきましょう。
集中荷重を受ける両端支持はり
ここでは、集中荷重を受けるはりとして算出したすべての値を添え字の1として表していきます。
集中荷重を受ける両端支持はりとしてみた場合、このような図になるかと思います。

両端支持はりに集中荷重が発生している場合の解き方につきましては、下の記事でも詳しく記載しております。

支点反力の計算
移動支点RB1の計算
支点反力RB1は、
$$R_{B1}=\frac{Wl_{1}}{l}=\frac{300×200}{1000}$$
$$=60N$$
となります。
移動支点RA1の計算
そしてRA1は、
$$R_{A1}=W-R_{B}=300-60$$
$$=240N$$
となります。
せん断力の計算
AC間とCB間のせん断力を求めます。
AC間のせん断力
$$F_{AC1}=+R_{A1}$$
$$=240N$$
CB間のせん断力
$$F_{CB1}=-R_{B1}$$
$$=-60N$$
曲げモーメントの計算
AC間とCB間と点Cの曲げモーメントを求めます。
AC間の曲げモーメント
$$M_{AC1}=R_{A1}x$$
$$=240x$$
CB間の曲げモーメント
$$M_{CB1}=R_{B1}(l-x)$$
$$=60(1000-x)$$
点Cの曲げモーメント
$$M_{C1}=R_{A1}x=240×200=48000$$
$$=4.80×10^4Nmm$$
S.F.D.図とB.M.D図の作成
以上の計算結果をグラフとしてまとめると、以下のようになります。

等分布荷重を受ける両端支持はり
ここでは、等分布荷重を受けるはりとして算出したすべての値を添え字の2として表していきます。
等分布荷重を受ける両端支持はりとしてみた場合、このような図になります。

両端支持はりに等分布荷重が発生している場合の解き方につきましては、下の記事でも詳しく記載しております。

支点反力の計算
等分布荷重の支点反力の計算は、等分布荷重の中央に集中荷重が作用していると仮定して、力のモーメントと力のつり合いから支点反力を求めていきます。

移動支点RB2の計算
支点Aを中心とすると、力のモーメントの総和はゼロという条件より、
$$-w(l_{2}-l_{1})\frac{l_{1}+l_{2}}{2}+R_{B2}l=0$$
$$\frac{-w(l_{2}-l_{1})(l_{1}+l_{2})}{2}+R_{B2}l=0$$
$$\frac{-w(l_{2}^2-l_{1}^2)}{2}+R_{B2}l=0$$
$$R_{B2}=w\frac{(l_{2}^2-l_{1}^2)}{2l} ・・・(1)$$
が得られます。
この式(1)に、それぞれの数値を代入して計算していくと、
$$R_{B2}=w\frac{(l_{2}^2-l_{1}^2)}{2l}$$
$$=1×\frac{(750^2-400^2)}{2×1000}$$
$$=201.25N$$
となります。
回転支点RA2の計算
一方でRA2は、
$$R_{A2}=w(l_{2}-l_{1})-R_{B2}$$
$$=1×(750-400)-201.25$$
$$=148.75N$$
となります。
せん断力の計算
等分布荷重が発生していないAD間とEB間、等分布荷重が発生しているDE間の3つの区間について考えます。
AD間のせん断力
$$F_{AD2}=+R_{A2}$$
$$=148.75N$$
DE間のせん断力
$$F_{DE2}=R_{A2}-w(x-400)$$
$$=148.75-1×(x-400)$$
$$=548.75-x$$
EB間のせん断力
$$F_{EB2}=-R_{B2}$$
$$=-201.25N$$
せん断力がゼロになる位置
せん断力がゼロになる位置(xm2)は、
$$x_{m2}=\frac{R_{A2}}{w}+l_{1} ・・・(2)$$
から求めることができます。
この式(2)にそれぞれの数値を代入していくと、
$$x_{m2}=\frac{R_{A2}}{w}+l_{1}$$
$$=\frac{148.75}{1}+400$$
$$=548.75mm$$
となります。この位置で最大曲げモーメントが発生しますので、ここで求めた数値はあとで曲げモーメント図を描く際の参考値として使用します。
曲げモーメントの計算
曲げモーメントは、等分布荷重が発生していないAD間とEB間、等分布荷重が発生しているDE間、そして点Dと点Eの5つを計算します。
AD間の曲げモーメント
$$M_{AD2}=R_{A2}x$$
$$M_{AD2}=148.75x ・・・(3)$$
DE間の曲げモーメント
$$M_{DE2}=R_{A2}×-\frac{1}{2}(x-400)^2$$
$$=148.75x-\frac{1}{2}(x-400)^2$$
EB間の曲げモーメント
$$M_{EB2}=R_{B2}×(1000-x)$$
$$M_{EB2}=201.25×(1000-x) ・・・(4)$$
点Dの曲げモーメント
式(3)のxに400mmを代入すると、
$$M_{AD2}=148.75x$$
$$=148.75×400$$
$$=59500=5.95×10^4Nmm$$
となります。
点Eの曲げモーメント
式(4)のxに750mmを代入すると、
$$M_{E2}=201.25×(1000-x)$$
$$=201.25×(1000-750)$$
$$=50312.5=5.03×10^4Nmm$$
となります。
S.F.D.図とB.M.D図の作成
以上の計算結果をグラフとしてまとめると、以下のようになります。

2つのS.F.D.図とB.M.D図を合体する
さきほどは、等分布荷重と集中荷重にいったん分けて、S.F.D.図とB.M.D図を作図してきましたね。
ここからは、その2つあるS.F.D.図とB.M.D図を合算していきます。
もう少しでゴールです。
最後まで一緒に頑張りましょう!
支点反力の合成
集中荷重が発生している場合の反力RA1とRB1、等分布荷重が発生している場合の反力RA2とRB2を合成していきます。
移動支点RBの計算
$$R_{B}=R_{B1}+R_{B2}$$
$$=60+201.25$$
$$=261.25N$$
回転支点RAの計算
$$R_{A}=R_{A1}+R_{A2}$$
$$=240+148.75$$
$$=388.75N$$
せん断力の合成
次に、各区間のせん断力も合成していきます。
先ほど求めた2つのS.F.D.図を並べるとこのようになります。

上の図を参考に、それぞれの区間を求めていきましょう。
AC間のせん断力
$$F_{AC}=F_{AC1}+F_{AC2}$$
$$=F_{AC1}+F_{AC2}$$
$$=240+148.75$$
$$=388.75N$$
CD間のせん断力
$$F_{CD}=F_{CB1}+F_{AD2}$$
$$=-60+148.75$$
$$=88.75N$$
DE間のせん断力
$$F_{DE}=F_{CB1}+F_{DE2}$$
$$=-60+548.75-x$$
$$=488.75-x$$
EB間のせん断力
$$F_{EB}=F_{CB1}+F_{EB2}$$
$$=-60-201.25$$
$$=-261.25N$$
DE間の範囲でせん断力がゼロになる位置(xm)
$$F_{DE}=488.75-x_{m}=0$$
$$x_{m}=488.75mm$$
合成したS.F.D.図

曲げモーメントの合成
集中荷重が発生している場合の曲げモーメントと、等分布荷重が発生している場合の曲げモーメントを合成していきます。
先ほど求めた2つのB.M.D.図を並べるとこのようになります。

こちらも、上の図を参考にして計算していきましょう。
点Cの曲げモーメント
$$M_{C}=M_{C1}+M_{AD2}$$
$$=M_{C1}+F_{A2}×200$$
$$=4.8×10^4+148.75×200$$
$$=4.8×10^4+29750$$
$$=4.8×10^4+2.97×10^4$$
$$=7.77×10^4Nmm$$
点Dの曲げモーメント
$$M_{D}=M_{CB1}+M_{D2}$$
$$=60(1000-x)+5.95×10^4$$
$$=60(1000-400)+5.95×10^4$$
$$=36000+5.95×10^4$$
$$=3.60×10^4+5.95×10^4$$
$$=9.55×10^4Nmm$$
DE間の曲げモーメント
$$M_{DE}=M_{CB1}+M_{DE2}$$
$$=60(1000-x)+148.75x-\frac{1}{2}(x-400)^2$$
点Eの曲げモーメント
$$M_{E}=M_{CB1}+M_{E2}$$
$$=60(1000-x)+5.03×10^4$$
$$=60(1000-750)+5.03×10^4$$
$$=15000+5.03×10^4$$
$$=1.50×10^4+5.03×10^4$$
$$=6.53×10^4Nmm$$
最大曲げモーメント
DEの区間でx=xmのとき、ここで最大曲げモーメントとなります。
これを求めるためには、先ほどの、
$$M_{DE}=60(1000-x)+148.75x-\frac{1}{2}(x-400)^2$$
という式のxに、DE間の範囲でせん断力がゼロになる位置(xm)で求めた数値488.75を代入して求めます。すると、
$$M_{DE}=60(1000-x)+148.75x-\frac{1}{2}(x-400)^2$$
$$=60(1000-488.75)+148.75×488.75-\frac{1}{2}(488.75-400)^2$$
$$=99438.28125$$
$$=9.94×10^4Nmm$$
となり、この一番高い数値が最大曲げモーメントです。
合成したB.M.D.図

等分布荷重と集中荷重を受ける両端支持はりのSFD図とBMD図
最後に、今回取り扱った問題の支点反力とS.F.D図、B.M.D図をまとめるとこのようになります。

以上、これですべての計算が終わりました。
まとめ
今回のポイントを押さえておくことで、等分布荷重と集中荷重が同時に作用する場合でも、落ち着いてS.F.D図・B.M.D図を描くことができるようになります。
各ステップを明確にし、それぞれ手順を守って計算していけば、複数の荷重が組み合わさったはり問題でも正確なせん断力・曲げモーメントの分布を描くことができます。
初めて取り組むときは難しく感じるかもしれませんが、ステップを追って少しずつ計算していくうちに「ここで力がこう変化して、モーメントがこう生まれるんだ」といったイメージが自然にわいてくるようになります。
S.F.D図やB.M.D図は材料断面の分布を“見える化”するための強力なツールですから、失敗を恐れずに何度も練習を重ねてみてください。焦らず繰り返し学習することで、はりの挙動を正確に理解し、解析や演習問題に自信を持って取り組めるようになりますよ。
それでは今日はここまで。お疲れ様でした!